
本記事は「研究所DX実践ログ」の連載です。
研究者からDX推進部へ異動した筆者が、現場と推進側の立場で感じたことや学んだことをそのまま記録します。
100記事を書き終えた直後の心境
「研究所DX Lv1〜100」を書き終えたとき、
ひとつの思想体系は完成した、という感覚がありました。
研究所DXとは何か。
それは単なるIT導入ではなく、
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構造の再設計であり
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時間の再配分であり
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関係性の翻訳である
そう定義できるところまでは辿り着いた。
けれども同時に、強く思ったことがあります。
思想は整った。
しかし、実践はまだ始まっていない。
ついに2026年4月、DX推進部へ異動しました。
与えられた任務
私に与えられた最初の任務は、
研究所におけるある研究開発品の管理システムを、ゼロから構築することでした。
対象となる開発品は、想定顧客ごとに多数のラインナップが存在します。
そのため、
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仕掛品
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ストック品
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納入品
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不良品
それぞれの数量や状態を、関係メンバー全員がリアルタイムで把握することが難しい状況でした。
現状は、エクセルのマクロで管理。
しかし属人化が進み、更新も煩雑で、継続が難しい。
「誰かが分かっている」状態。
しかし「みんなが見える」状態ではない。
そこで構想しているのは、
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各開発品
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各ロット
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各サンプル
ごとにQRコードを付与し、
それを紐づける管理システムを構築すること。
物理とデータを結びつけ、
在庫・状態・履歴を可視化する。
目指すのは研究開発効率の向上です。
華やかなAI導入ではありません。
地道なシステム設計です。
最初に感じた違和感
研究者としての仕事は、
技術の細部を徹底的に詰める営みでした。
一方、DX推進部で問われるのは、
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全体構造をどう設計するか
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誰が使うのか
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どう運用が回るのか
技術の深さではなく、構造の広さ。
さらに言えば、
私はどこかで「空気を変える」「体質を変える」といった
ダイナミックな変革をイメージしていました。
しかし目の前にあるのは、
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サンプルの棚卸し
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運用フローの整理
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現場とのすり合わせ
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データ項目の定義
地味です。
驚くほど地味。
けれど、その地味さの中に、
DXの本質が潜んでいるのではないかとも感じました。
構造として見えてきたこと
この管理システムの問題は、
単なるIT未整備ではありません。
本質は、
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情報が点在していること
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状態が時間軸で追えないこと
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責任の所在が曖昧なこと
つまり、構造の問題です。
研究所では、専門性と自律性が強みになります。
しかしそれは同時に、
「自分の範囲は把握しているが、全体は見えない」
という状態を生みやすい。
QRコードを導入すること自体は手段にすぎません。
重要なのは、
物理的なモノの流れを、
データとして時間軸に沿って可視化すること。
それはまさに、
私がLv1〜100で書いてきた
時間の再設計
その実装に他ならないと気づきました。
それでも感じた可能性
システム構築は地味です。
現場との丁寧なすり合わせも必要です。
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入力の手間はどこまで許容されるか
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現場の負担をどう減らすか
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誰が最終責任を持つのか
一つひとつ合意を取らなければなりません。
しかし、もしこの仕組みが機能すれば、
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在庫状況が即座に把握できる
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無駄な試作や重複作業が減る
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判断が早くなる
全体が見えるようになる。
これは派手ではない。
けれど、確実に研究開発の速度を変える。
DXは革命ではなく、
構造を静かに書き換える営みなのかもしれない。
そう思えたとき、
この任務は単なるシステム構築ではなく、
研究所DXの足がかりに見えてきました。
宣言
第1章では、理論を書きました。
第2章では、実践を書く。
成功も、失敗も、迷いも含めて。
会議の空気も、構造の壁も、そのまま記録する。
研究者から推進側へ。
立場が変わった今、
見える景色がどう変わるのか。
ここからは理論ではなく、
実践による学びと気づきを記していきます。
それが「研究所DX実践ログ」の始まりです。